宇多田ヒカルと村上春樹の意外な接点?

こんにちは高橋です。

今日は村上春樹の引用から始めたいと思います。

彼が、学生時代レコード屋でアルバイトをしていたときにたまたま会った
「ある有名人」について語っている部分です。

「彼女はマネージャーもつれずに一人でふらっと僕の働いているレコード屋に入ってきて、すごくすまなそうなかんじで「あの、売れてます?」とニコッと笑って僕にたずねた。とても感じの良い笑顔だったけれど、僕にはなんのことなのかよくわからなかったので、奥に行って店長をつれてきた。
「あ、調子いいですよお」と店長が言うと、彼女はまたニコッと笑って「よろしくお願いしますね」と言って、新宿の夜の雑踏の中に消えていった」
(※「村上朝日堂」所収)

村上春樹と言えば、同業者との付き合いを極力しない
作家として知られていたと思います。

取り上げる作家の名前は、ほとんどが外国人で、日本人の名前は
小説の中で三島由紀夫、対談で大江健三郎中上健次
エッセイで吉行淳之介嵐山光三郎村上龍に関して言及
したくらいではないでしょうか。
(名前が出るくらいならもう少しいたとは思いますが)

元々興味がない、ということはあると思いますが、そういう傾向は芸能人
に関しても共通しています。

とにかく、日本人の名前に触れて何か言った文章をほとんど見かけません。

そんな、村上春樹の文章のなかで、私が知るかぎり
めずらしく「有名人」に触れたものが存在します。

それが、上に引用した文章です。

ちなみに引用したエッセイのタイトルは
「僕の出会った有名人2」です。
(「僕の出会った有名人3」は「吉行淳之介」でこれもすごく面白いエッセイです)。

この「有名人」、あなたは誰だかわかりますか?

このエッセイが入った、本が出版されたのは1984年で
元々「日刊アルバイトニュース」という雑誌に掲載された
エッセイをまとめて刊行したものとあります。

つまり、文章自体はもう少し前に書かれたものですね。

村上春樹の学生時代というと1969年くらいでしょうか。

このころ活躍していた「有名人」で、エッセイのなかでは
「ヒット曲をたてつづけに出し、ひとつの時代を画したスーパースターである」
とその人を指して形容しています。

ヒントはタイトルに入れた宇多田ヒカルになりますが、わかりますか?

これは、宇多田ヒカルのお母さん
「藤圭子」
について書かれた文章になります。

そうですね。

残念ながら2013年に自殺してしまった藤圭子です。

私は訃報がニュースになったとき
頭に浮かんだのが村上春樹のこのエッセイでした。

引用した文章にうしろがあるので続けてみたいと思います。

「そんなわけで僕はまるで演歌は聴かないけれど、今に至るまで藤圭子という人のことをとても感じの良い人だと思っている。ただ、この人は自分が有名人であることに一生なじむことができないんじゃないかなという印象を、その時僕は持った」

優れた作家の洞察は40年先も見通すという感じでしょうか。

ちなみに、村上春樹が藤圭子と「会った」レコード屋は「新宿にあった」そうです。

藤圭子が亡くなったのも新宿ですね。
(デビュー曲は「新宿の女」だそうです)

村上春樹の文章はさらに後ろがあり、最後をこうしめています。

「あれから離婚したり改名したりしたという話だけれど、がんばってほしいと思います」

私は、藤圭子について宇多田ヒカルのお母さんくらいの認識しか
ありませんが、たまに新宿に行くと、このエッセイを思い出し
村上春樹の慈愛に満ちた言葉も届かなかったんだな~
などと少し儚い気分になります。

今日は紀伊國屋に行く用事があり
ふと頭によぎったので、随分村上春樹の文章を借りて
英語とは関係ないことを話してしまいました。

「宇多田ヒカル」の名前を出して随分大風呂敷を広げてしまいましたね。

明日は英語の話に戻りますのでお楽しみに!

 

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●追伸
一応、英語に関するブログなので
村上春樹が、英語に関して語っている文章も引用しておきたいと思います。
(今日は引用ばかりですが…。)

「僕は(中略)会話のほうもさぞや堪能なんだろうと世間で思われがちなのだけれど、そんなことはなくて、恥ずかしながらまったく苦手である。何か用事があって外国人と会って英語ではなさなくてはならないような時には、朝からなんとなく胃が重くて仕方ない。」
(※「CAN YOU SPEAK ENGLISH」「「村上朝日堂はいほー」所収)

私は、このエッセイを、仕事で外国人に接するようになってから
読み返して、随分救われた気分になったのを覚えています。

このあとの文章では英語に関する村上春樹の考え方が披露されています。

面白いエッセイなので、ぜひ手にとってみてください。

今日はこのあたりで。

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