「a」のあるなしでこんなに違うの?冠詞その3 ~ 鶏を丸ごと食べてしまった話~

高橋
こんにちは高橋です。
今日は「冠詞のツボは実は〇〇にある!?」「冠詞の「a」は実は誰とでも相性がいい!?」に続いて冠詞を再び取り上げたいと思います。この冠詞の世界はとにかく日本人にとってやっかいな領域ですが、時に言葉の意味そのものが変わってしまうほど、重要な役割を担っています。今日も一緒に勉強していきましょう!
 
 
 
 
 

ウィッキー三世
今日はまた冠詞ですか?
乱三世
はじめに「冠詞のツボは実は〇〇にある!?」という回で冠詞を扱ったとき、とにかく冠詞っていうのは奥が深いものだと言ったけど、少しずつその奥の深さに触れていくのがいいと思ってね。まず「the」と「a/an」の違いっていうのはどういうところにあると話した?
ウィッキー三世
「a/an」が名詞についているときは「ある共通の特性を持つグループの中の一つの存在を指す」ということでしたね。
乱三世
「同じ特性を持つグループの任意の一つ」ってことは、言葉を変えれば、「特定できないもの」を指しているわけだ。「the」はどう?
ウィッキー三世
「the」っていうのは「話し手と聞き手との間にそれが何を指しているのかという前提がはっきりしている場合に使う」ということでした。
乱三世
特定の「それ」を指すということだな。基本的には発信する側と受け取る側との共通理解がないといけないということだったわけだ。「冠詞のツボは実は〇〇にある!?」の回では、「the ex-husband of my sister」「an ex-husband of my sister」の違いっていうのも説明したけど、これは覚えている?「ex-husband」っていうのは「別れた夫、元の夫」ということだけど。
ウィッキー三世
「別れた夫の数」がわかるということでしたね。
乱三世
「the ex-husband of my sister」っていうのはどうなるの?
ウィッキー三世
これは、妹のわかれた夫が1人だけだとわかるということですね。
乱三世
「an ex-husband of my sister」は?
ウィッキー三世
妹のわかれた夫が2人以上いるということですね。
乱三世
そう。「a/an」というのは「ある共通の特性を持つグループの中の一つの存在」だから、その中の任意の一人ということになってしまうわけだな。そうなると別れた夫がほかにもいるということになるわけだ。念のため、「the」と「a/ an」の考え方のまとめを再掲しておこう。
 
 
 
 
 

「the」……話し手と聞き手との間にそれが何を指しているのかという前提がはっきりしている場合に使う。

「a」……ある共通の特性を持つグループの中の一つの存在を指す。「特定できないもの」を指す場合に使われる。

 
 
 
 
 

ウィッキー三世
それで今日は、さらに奥に行進していくわけですか?
乱三世
これまで説明してきたことを考えれば基本的には、話し手の意識によって冠詞っていうのは決まってくると言っていいと思うんだな。もちろん、特定の名詞には定冠詞が付く等のルールは存在するわけだけど、ざっくり言ってしまうとそうなるわけだ。ただ、やっかいなのが名詞によっては冠詞が付く、付かないで意味が違ってくるものが存在するというところなんだな。
ウィッキー三世
例えばどういうことですか?
乱三世
「数えられる名詞」と「数えられない名詞」っていう考え方が英語にはあるだろ?
ウィッキー三世
可算名詞、不可算名詞ってやつですよね。
乱三世
「count」と「uncount」ということだな。何がやっかいなのかと言うと、名詞によっては「数えられる」ときと「数えられない」ときとで意味が違ってくるということなんだ。
ウィッキー三世
それが、無冠詞になっているときと冠詞が付いているときで意味が違うってことになるわけですか。
乱三世
それがやっかいなわけ。話し手の意識で決めることなんだけど、そういう名詞の性質が頭に入っていないと使いこなせないということになるわけだからな。今日はそういう可算名詞にも、不可算名詞にもなる単語をいくつか見て、感覚を慣らしていこう、ということだな。
ウィッキー三世
今日も小説の実例が付くわけですか?
乱三世
村上春樹の「羊をめぐる冒険」から引用してみたからまずこの文を見てみよう。
 
 
 
 
 

For lunch, it was cheesecake from the freezer and strong milk tea.
A snacktime, I treated myself to hazelnut ice cream topped with Cointreau.
In the evening, broiled chicken and a can of Campbell’s soup.

昼には冷凍してあったチーズ・ケーキを食べ、濃いミルク・ティーを飲んだ。
三時にはヘイゼルナッツ・アイスクリームにコアントロをかけて食べた。
夕方には骨つきの鶏肉をオーブンで焼き、キャンベルのスープを飲んだ。

 
 
 
 
 

乱三世
「羊をめぐる冒険」っていうのは村上春樹の初期の作品だけど、「ぽい」感じが出ているだろ?
ウィッキー三世
食事の描写がですか?
乱三世
元々自分のバーをもっていた人だから料理の描写に特徴があると思うんだな。まあとにかくその「ぽい」文章の中で、まず「In the evening, broiled chicken and a can of Campbell’s soup.」っていうのを見てみようか。
ウィッキー三世
この中に可算、不可算で意味が違う名詞があるわけですか?
乱三世
まずどんな意味だった?
ウィッキー三世
「夕方には骨つきの鶏肉をオーブンで焼き、キャンベルのスープを飲んだ。」ですね。
乱三世
ここでは「chicken」がやっかいな単語なわけだな。単数の無冠詞ということは「不可算名詞」で使われているということだけど、この時の意味が何?
ウィッキー三世
「鶏肉」ですね。
乱三世
そう。それを「In the evening, a broiled chicken and a can of Campbell’s soup.」と「broiled chicken」の前に「a」を入れて可算名詞扱いにすると、鶏をまるごと一羽オーブンに入れて焼いた」となるんだな。
ウィッキー三世
「a chicken」で「鶏一羽」ですか。それは一人で食べていたら結構な量ですね。
乱三世
抒情もなにもなくなるだろ?
ウィッキー三世
まあ、随分食べるんだな、と思いますね。
乱三世
そうだよ。これは確実にうんこがでかくなっちゃうよ。場合によっては村上春樹の文章も台無しになってしまうわけだ。
ウィッキー三世
うんこはいらないと思いますけど。
乱三世
引用のなかにはまだほかにもあって、「For lunch, it was cheesecake from the freezer and strong milk tea.」という文章にやっかいなのがいるな。どういう意味だった?
ウィッキー三世
「昼には冷凍してあったチーズ・ケーキを食べ、濃いミルク・ティーを飲んだ。」ですね。
乱三世
じゃあ例えば「For lunch, it was a cheesecake from the freezer and strong milk tea.」と「cheesecakeチーズケーキ」の前に「a」を付けたらどういう意味になるかわかる?
ウィッキー三世
「cheesecakeチーズケーキ」がやっかいなわけですか?
乱三世
そう。どういう意味? さっきと同じ理屈だ。
ウィッキー三世
ということは、「まるごと1つ食べた」となるわけですか。
乱三世
「ホールケーキ」を全部食べちゃったってことになるわけだ。「cheesecake」と無冠詞であればチーズケーキ一切れで、「a cheesecake」と「a」が付けばホールケーキまるごとになるってことだな。また村上春樹の抒情も吹っ飛んじゃうだろ? うんこがでかくなることこの上ないわけだ。
ウィッキー三世
うんこの話はもういいですけど、ようするに「cake」にそういう性質があるということですよね。
乱三世
そう。だから「cake」はもちろんだけど、「chocolate cake」でも同じ理屈がなりたつわけだ。こういうのはほとんど慣れの次元とも言えることかもしれないな。ほかにも紹介しておきたいものがあるから見てもらおう。同じく「羊をめぐる冒険」から引いてみた。
 
 
 
 
 

“Do you read the Sunday pages?”
“Of necessity, yes,” he said.
“Did you see the photo of the horse in the weekend section?”
“Yes, I saw the horse photo,” said the man.

「日曜版も読むんですか?」
「日曜版もやはり読む」と男は言った。
「今朝の日曜版の馬の写真は見ました?」
「馬の写真は見たよ」と男は言った。
,※of necessity必然的に、当然に

 
 
 
 
 

乱三世
ここでは「“Did you see the photo of the horse in the weekend section?”」の部分だな。「horse」がその単語だけど、どういう意味になっている?
ウィッキー三世
「今朝の日曜版の馬の写真は見ました?」ですね。
乱三世
そう。これを「“Did you see the photo of horse in the weekend section?”」と今度は「the」を取って無冠詞にするとどういう意味になるかだな。どう?
ウィッキー三世
「馬」っていう概念とかそんな感じになるんですか?
乱三世
これは「馬肉」って意味になるんだな。だから「“Did you see the photo of horse in the weekend section?”」で「今朝の日曜版の馬肉の写真は見ました?」となってしまうわけだ。
ウィッキー三世
無冠詞で「馬肉」ですか。
乱三世
例えば「Do you like dog?」としたらどういう意味になる? 同じ理屈だけど。
ウィッキー三世
「犬の肉は好きですか」となるわけですか。
乱三世
そう。「犬は好きですか?」としたいなら「Do you like dogs?」とするのがいいね。突然「Do you like dog?」と聞いたら「うん?」となるから注意が必要だろ? 最後にもう一つ、さっきの文章の前のくだりを見てみよう。
 
 
 
 
 

“Which newspaper do you read?”
“Eight papers, national and local. The locals do not arrive until evening, though.”
“And you read them all?”
“It is part of my work,” said the man patiently. “What of it?”

「新聞は何を読んでいるんですか?」
「全国紙を全部と地方紙を八紙。地方紙は夕方にならないと来ないけれどね」
「それを全部読むわけですか?」
「仕事のうちだからね」と男は我慢強く言った。「それで?」

 
 
 
 
 

乱三世
ここでは「paper」に注目してほしいけど、どうなっている?
ウィッキー三世
「新聞」ですね。
乱三世
そう。この「paper」は可算名詞では「新聞」とか「論文」なんていう意味になるわけだ。逆に不可算名詞のときはどうなるかわかる?
ウィッキー三世
「紙」ですか。
乱三世
そう。とにかく今日は可算名詞のときと不可算名詞のときで意味が違う名詞があって結構悪さをするから注意しようということだな。この冠詞はこれからもしつこく取り上げていくから、全体を読んでもらえれば理解が進むと思う。
 
 
 
 
 

今日の冠詞のまとめ~可算、不可算で意味が変わる名詞~
●a chicken……鶏一羽/chicken……鶏肉
●a cake……ホールケーキまるごと/cake……ケーキ一切れ
●a horse……馬一頭/horse……馬肉
●a paper……新聞、論文/paper……紙

 
 
 
 
 

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●追伸

高橋
今日取り上げた村上春樹の「羊をめぐる冒険」は「風の歌を聴け」、「1973年のピンボール」に続く初期の3部作の一つです。チャンドラーの「ロンググッドバイ」を彷彿とさせる場面が点在していたり、未だ「アメリカ」の空気が充満しています。「ノルウェイの森」以降の村上春樹も面白いですが、初期の小説もまた必見です。まずは日本語から試食してみてください。

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